男の武装解除

「男らしい」という表現がある。

では、男はどうあらねばならいのか。凛々しく、ぐいぐいと肩で風を切り、悩みや苦しみなど蹴散らしながら突き進む…。さあ、これで男らしくなったか。

一方、昨今の若い女のコは、決して男らしさを求めてもいないようだ。「優しい男」が理想の男性像として浮かび上がる。どうやら、男が男であることを意識し、自らを象っている面があるのだろうか。

男は男として何かを完遂する、とした見方がある。やや究極の例ではあるが、その完遂には自殺と殺人がある。
自虐的な完遂として自殺があり、他虐的な完遂として殺人がある。

双方ともに男性の事例が女性よりも圧倒的に多い。

自虐的な側面―男性が自らの命を断つ際に用いる方法は、首つり・排気ガス・焼身が多い。絶命する確率が高い手段を選んでいる。

それに対して女性はリストカット・向精神薬の服用が多い。

絶命よりもヘルプサインの意味合いが強い、といわれる。他虐的な側面―自らの思いが他者に伝わらず、無視される。

男の沽券にかかわる事態を前に、暴発的に男の花道を飾る。己に何ら過失はなく、他者にその責任を全て転嫁しているところは、一切弁明の余地はないが、他虐的に殺人を犯しているという点で、2008年の「秋葉原事件」はこれに当るだろう。

この2つの事例、相反しているようで、男をどこで切り取るか、という意味において同じ文脈といえるかもしれない。

男性がドミナント(支配していること、優勢であること)を主張し、それが受け入れられない時、そのリアクションとして、取り得る2つなのかもしれない。

ただ、そのリアクションとして、より、ゆるく、だるく、たるく、生きること、考えることを許容される社会であれば、違った生き様になることもありうるだろう。

安部博文

安部博文株式会社エンシュー 代表取締役

投稿者の過去記事

熊本市出身。法政大学政策科学研究科修了。短大、大学、専門学校、予備校の講師として教壇に立つ傍ら、公務員試験本や大学生の一般教養書籍を執筆しています。

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